Debussy

◎よく聴く曲、または特に思い入れのある曲、その4。
 
 
  ドビュッシー アラベスク 第1番
  Debussy 1ere Arabesque
  Piano: Michel Beroff
 
 
15歳の頃だったかな、それまで綺麗に整った和音の曲しか弾いたことがなかった私は、先生にこの楽譜をもらって、とても戸惑いました。不協和音だらけで変化の激しいドビュッシーの曲は、楽譜をさらっていて自分が合っているのか間違っているのか、ちっとも分からなかったのです。
 
右の旋律があって、それに重なる左手の和音があって....そんな素直なピアノ曲しか知らなかった私は、不協和音の連続な上に指の本数をまるで無視したドビュッシーの曲に、数小節進むだけで疲れ果ててしまいました。全くこの曲が分からなくて、とうとう私はレコード店へこの曲のCDを買いに行きました。私が初めて買った、ピアノ曲のCDでした。
 
家に帰って聴きました。そして、言葉を失いました。このベロフの演奏を聴いて私が感じたのはメロディではなく、空気と色だったのです。私はこの曲をいつも通り、おしゃべりするように弾こうとしていたのに、この楽譜に書かれていたのは言葉にならない感情でした。不協和音はそのために必要なニュアンスであり、それを語るためにはかなりのスピードでこの曲を弾ききらないといけないことが、CDを聴いて容易に想像できました。
私は大変なことになったと思いました。
 
 
そんな思い出の曲です。笑
 
 
 
◎今聴いている曲
 
Michel Beroff 演奏の、ドビュッシーのピアノ曲を聴いています。彼の弾くベルガマスク組曲が大好きです。ベロフはジャン=フィリップ・コラールと「4手のための小組曲」なども録音しています。いわゆる「連弾」で、2人つまり4本の手でひとつの曲を弾くものです。2台のピアノが奏でるこれらの曲も圧巻でした。
子供の頃「連弾」というと「届かない指のかわりに二人で力を合わせて頑張る」みたいなイメージを持っていた私は、彼らの連弾を初めて聴いた時、呆然としてしまいました。ラベック姉妹の「パリのアメリカ人(ガーシュウィン)」を聴いた時もびっくりしたけれど。

「力を合わせる」って本当は、半人前同士が支え合うんじゃなく、こんなプロフェッショナルな人達が舞う「戦いの火花」のようなものかもしれない、そんなふうに初めて感じた瞬間でした。凄腕同士が力を合わせた時のあの底知れぬパワーって、なんてエキサイティングなんだろう。そんなプロの大人を垣間見てしまったあの日。
 
 
そんなオトナになりたいなぁと
今でも思います。笑

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