Daphnis et Chloe

◎よく聴く曲、または特に思い入れのある曲、壱の4。


 ダフニスとクロエ

 「Daphnis et Chloe/Maurice Ravel」
  指揮:Charles Dutoit
  演奏:モントリオール交響楽団
  合唱:モントリオール交響合唱団


「もう鳥肌だよ、鳥肌。」
と言って3年生のH先輩が聞かせてくれたのが
このデュトワの「ダフニスとクロエ」でした。
幻想的な人声のハーモニーで始まるこの曲、特にデュトワの「ダフニスとクロエ」は素晴らしいです。

デュトワさんは7カ国語が出来るんですって。旅好きの彼は、インタヴューにこんなふうに答えていました。
「私は、自らの音楽生を豊かにしようといった目的のために旅をしているのではありません。私はつねにヒューマニストでありたい。人道主義者というよりは、古代ギリシャの哲学者のようなあらゆる人知に精通した人間になりたい。そのために旅に出て世界を見たい、土地の人々がどんな暮らしをしているのか知りたいと思うわけです。私はまだ何も知らないのですから。」
(Seven Seas 2002年2月号より)

この曲はバレエ音楽で、そのストーリーの元は2世紀末に書かれたロンゴスの古代小説だと言われています。
というわけで、今回はそのお話をご紹介。


舞台は神の国の森。
幼い頃から兄妹のように仲の良いダフニスとクロエ。
いろいろあって、二人は恋仲になるのですが
うっかり海賊にさらわれちゃうクロエ。
それを知ったダフニスは気絶(助けに行けよ)

妖精達が現れてダフニスを蘇生、パンの神(牧神)にクロエを返してくださいと祈らせる。すると突如、どわどわと牝山羊達が海賊達を取り囲み、パンの神も大地を割って「出て行け〜」と海賊にのしかかり、みごと退散。

倒れているクロエを羊飼いが発見。
別の場所で別の羊飼いが、気絶中のダフニスも発見。
二人は再会し、しっかりと抱擁。
「もう君を放さないよ、クロエ。」
「愛してるわ、ダフニス。」
村人の祝福の乱舞でジ・エンド。


ちょっと待て、ダフニス。
おまえ、気絶してただろう?
いいのかクロエ、そんな頼りない男で....

と思わず、ツッコミたくなってしまう私。


いや、いいんです。
ダフニスの祈りが届いてクロエは助かったんだし。
元のお話も読んでみたいな...素敵な恋物語りだそうです。
ところでこの再会のシーンで「無言劇」という場面があります。フルートの美しい曲で、私はこの旋律が大好きでした。これはパンの神とニンフのシリンクスの恋を表現した場面だそうです。老羊飼いがダフニスに「パンの神が助けてくれたのは、彼がかつて愛したシリンクスへの想いのおかげじゃ」と話したからです。

パンは半獣人で羊飼いの神様でした。
ある日、彼は美しい妖精のシリンクスに恋をしました。
怖がるシリンクスをパンは川辺まで追いかけ、ようやくその手が彼女を捕まえた瞬間、川の精に助けを求めたシリンクスは葦に変わってしまいました。

悲しみのあまり、パンはその葦で笛を作りました。
そして毎日、美しく悲しい旋律を吹きました。
それがパンフルートになりました。


ドビュッシーの音楽に、「シリンクス」という
フルート・ソロの綺麗な曲があります。
私は高校生の時、何も知らずに、偶然その楽譜をお茶の水の楽器店で見つけ、ただ大好きなドビュッシーのフルート独奏というのに惹かれて買いました。
彼女にまつわるいろいろなお話を知ったのは
それからずいぶん後のこと。


というわけで、今日はキリンの写真です。
(山羊フォトが無かったので)

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