PIANO MAN

◎よく聴く曲、または特に思い入れのある曲、壱の3。


 ピアノ・マン


 土曜の夜9時 いつもの奴らが集まってくる
 俺の隣にはじいさんが座っていて
 ジン・トニックに溺れている

 じいさんは言った
「若いの、思い出ってやつを弾いてくれるか。
 俺はもうどんなだったか覚えちゃいないが
 まぁ、ほろ苦くてな。それでいて甘いやつさ。
 俺も生意気な頃にゃ、よく知ってたんだがな。」

 歌ってくれよ、ピアノ・マン
 今夜は歌ってくれ
 俺達はメロディに酔いたい気分なんだ
 ああ 最高に素敵な夜じゃないか

 バーテンのジョンは俺の友達だ
 いつも俺に酒をタダでおごってくれる。
 ジョークも煙草の火にも、気の利くいい男さ
 でも奴は、どこか他に行きたい場所があるんだ。
「なぁ、ビル。もううんざりだ。」
 そして奴の顔から笑顔が消える
「ああ、俺はきっと映画スターになるぞ。
 もしこの場所から出て行けたらな。」


 ポールはじつに立派な小説家なんだ
 立派過ぎて、結婚する暇もないくらいだ。
 彼は海軍の思い出と、海にとり憑かれていて
 まぁ 一生そのまんまだな。

 政治学を勉強しているウエイトレスがいる
 その横で、会社員がずるずると酔っぱらう
 そうさ みんな「孤独」ってやつを飲み交わしているんだ
 だが、ひとりで飲むよりはマシだろう

 
 土曜の夜は随分混むんだ
 支配人が俺に向かって笑顔を見せる
 彼は皆がピアノ弾きの俺に会いにきてるのを知ってるのさ
 束の間、人生を忘れるためにね

 そして、ピアノはカーニバルのように鳴り響く
 マイクはもうビール漬けだ
 奴らはカウンターに座って俺のグラスに金を放り込む
 それでこう言うのさ
「ところで、あんたはここで何をしてるんだい?」


 歌ってくれよ、ピアノ・マン
 今夜は歌ってくれ
 俺達はメロディに酔いたい気分なんだ
 ああ 最高に素敵な夜じゃないか

 (「PIANO MAN/Billy Joel」)
  
 
  
これは、ビリー・ジョエルがまだ有名になる前
西海岸のバーでピアノ弾きをしていた時の思い出を
綴った歌なのだそうです。

酒と音楽と、さまざまな人々の人生を描いた
最高に素敵な曲です。

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