ある曇ったお昼休み。
何枚か樹木の写真を撮ったけれど
この日は光が少なくてあまり撮れず、帰ろうとしました。
カメラをしまっていると、ふいに辺りが明るくなりました。
先ほどまで分厚いグレイの空に埋もれていた太陽が
ほんの僅かな雲の切れ間から、顔を出しました。
振り返ると、ついさっきまで淋しげに俯いていた樹木達が
光の中、突き刺すように天を仰いでいました。
私は慌ててカメラを取り出し、
急いで調整して2回連続のシャッターを切ると
瞬く間に、また太陽は雲の向こうに消えてしまいました。
つかの間の光。
そんな瞬間に立ち会えることが、そして
その緊張感をこうしてフイルムを通して思い出せることが
写真を始めてよかったな、と私が感じる
一番の幸福です。 |