白梅

雨上がりの白梅。
潔く凛とした姿に、心を打たれます。

梅の里で育った私は、桜よりも
この梅のほうが馴染みの深い花でした。
初春の寒風に乗る、懐かしい梅の香。


古には「花」と云えば桜ではなく、梅を指したといいます。中国文化を尊んでいた当時、万葉集では桜の歌が四十首ほどなのに対し、梅の歌は百首以上。御所の紫宸殿に植えられていたのも、左近の梅と右近の橘でした。


  万代に 年は来経とも 梅の花
  絶ゆることなく 咲きわたるべし
 (「万葉集 巻第五」筑前介佐氏子首)


  千年、万年と世を経ても 梅の花は
  絶えること無く 咲きつづけることでしょう
 
 
 
寒い季節を、越えるからこそ
趣き深い春がある。
厳寒を割る梅の香りは、四季の始まりでした。
万葉の人々は梅を愛し、また
その季節に待ち遠しい想いを託していました。


冷え込まなかった、今年の冬。
雪を割いて、春の訪れとなるはずの梅も
戸惑うようにあたたかな冬を終えました。
温暖化で、季節がすこしずつ狂っています。

万葉人に愛された、雅の花。
「千年、万年と咲き続けるだろう」
と彼らが歌ったこの梅も
儚く、消えゆく運命なのでしょうか。
 

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