秋の原石

秋の初め。草むらの蔓植物も実をつけました。
熟し始めた果実が色とりどりで、まるで青い宝石のよう。
瑠璃、菫青石、紫水晶、翡翠、天河石、橄欖石。

宮沢賢治は東京に上京した時、偶然神田で宝石の原石を扱っているお店を見つけました。そして宝石研磨の仕事に就こうと思い立ち、熱心に研究していたそうです。そんな彼の詩や小説には所々に美しい宝石や貴石がちりばめられています。

青い宝石、瑠璃はラピスラズリとも呼ばれます。宮沢賢治の詩には、瑠璃がこんなふうに登場していました。


 交錯するひかりの棒を過ぎり
 われらが上方とよぶその不可思議な方角へ
 それがそのやうであることにおどろきながら
 大循環の風よりもさはやかにのぼって行つた
 わたくしはその跡をさへたづねることができる
 そこに碧い寂かな湖水の面をのぞみ
 あまりにもそのたひらかさとかがやきと
 未知な全反射の方法と
 さめざめとひかりゆすれる樹の列を
 ただしくうつすことをあやしみ
 やがてはそれがおのづから研かれた
 天のる璃の地面と知つてこゝろわななき
 紐になつてながれるそらの楽音
 また…

  (宮沢賢治「青森挽歌」より)

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